星の王子さま/サン=テグジュペリ

極上のファンタジーだけれど、風刺や寓話も含まれていて大人も子供も楽しめる小説。 

星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま (新潮文庫)

 

 

他の惑星から地球を訪れた星の王子さま(以下「王子」)と、砂漠に不時着したパイロットの主人公が出会う物語。

物語前半は主人公の幼少期と王子が地球に来るまでの過程を描いている。

王子は地球にくるまでに、いくつかの星を訪れてそこに住む人達と話をする。やがて、流れ流れて地球へと到着して主人公と出会う。

この物語のテーマには「物事は表面ではなく中身を見ることが大事」というものがある。王子はまさにこのテーマを体現する存在として描かれている。

それぞれの星には、権力者や経営者、学者など現代社会に実際に存在する人々がモチーフになっているであろうキャラクターが暮らしているのだけれど、彼らは逆に物事の表面しか見ることができない象徴として描かれている。王子は初めは興味を持って彼らと会話するのだけれど、次第に自分と真逆の価値観を持つ存在だと気が付いて、会話に飽きて次の星に行ってしまう。

ここらへんのシーンが現代社会への風刺になっていて面白かった。

王子が地球に到着して主人公と出会ってからは、じゃあ大事な中身とは何かということが描かれていて、純粋なファンタジーとしても寓話としても楽しめる内容になっている。

作品の内容自体はもちろん、河野万里子さんの日本語訳とあとがきも素晴らしくて、特にあとがきに書いてある考察を読むと、この物語に秘められている深い意味を知ることができて、より作品を楽しむことができて良かった。